おだわら市民交流センター「UMECO」 | 小田原市

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市民活動団体インタビュー

ピンクリボンぷらすODAWARA 女性のがんを考える会

 UMECOでは、市民活動を盛り上げるために様々な取組を行っています。より多くの市民に活動への関心を持っていただくため、今回は新しく団体を立ち上げ、市民活動応援補助金を活用しながら熱心に活動する団体に、活動を始めたきっかけややりがいなどについて、インタビューを行いましたので紹介します。
※インタビューは、令和5年9月26日に実施しました。
お答えいただいた方

ピンクリボンぷらすODAWARA
女性のがんを考える会

代表 前川 いく さん (写真:左)
事務局長 宇田川うだがわ 路代みちよ さん (写真:右)
―活動の概要を教えてください。

宇田川さん

 令和4年10月に発足をして、がん検診の啓発を行っています。名前に「ぷらす」と付けたのは、乳がんだけでなく、女性も男性もなく、がんに関わった方たちを繋ぐ場所とか、がんになったときに焦らないようにするために情報をお伝えするという意味があります。がんというのはとてもデリケートな話なので、誠実に少しずつ活動していくことで皆さんに認めてもらおうと考えています。
 団体を立ち上げてから6月に最初のイベントを行いまして、次は10月のピンクリボン月間にピンクリボンフェスティバルを実施します。何かあったときに悩みを聞いたり、つながったりする団体があるということをお伝えしていく、という意図です。テーマはすごく真面目ですが、気軽に来ていただけるような雰囲気も大事にしています。
―団体を立ち上げたきっかけを教えてください。

宇田川さん

 そもそものきっかけは、藤沢でピンクリボン活動をされている団体の方が、小田原の女性のコミュニティ団体の集まりで講演いただきました。その際に、団体の方から、小田原にもピンクリボンの活動が広まったらいいですね、と言っていただきました。
 私は20代の時に母親をがんで亡くしており、発起人も大切な友達を若くして亡くし、そのお子さんが残されているのを見ています。そういう経験から、「事前に知っていれば、もっとこういうことができたのに」という、後悔のようなものがありました。
 そういう活動があったらいいな、と思っていたところ、発起人が、前川さんが小学校でがん教育についてお話しされるのを聞きました。ご自身の体験などもお話しされており、「これだ」と思い、活動を始めることについて相談したところ、「すごくいいと思います」と言ってくださいました。
 それで本当に団体を立ち上げることになりまして、そこまでで1年ぐらいでした。前川さんと出会わなかったら、まだ団体は立ち上がっていなかったかもしれません。
―会員数はどれぐらいでしょうか。

宇田川さん

 これまでは会員募集を本格的には行っておらず、運営スタッフと6月のイベントに来てくださった方、のような形で、正式な会員は30人ぐらいです。6月のイベントには、100人ほど来場いただきました。
―個人ではなくて、団体で取り組もうと思われた理由を教えてください。

前川さん

 個人ではなかなか動けないですね。人も足りないし、知り合いもあまりいない。仲間がいると、それだけ人脈も増えますし、横に仲間がいるということで力強く、心強い。力を結集して、10倍、100倍の力で取り組むことができます。

宇田川さん

 実際に運営していると、みんなそれぞれ得意なことが違うと感じます。仕事もバラバラです。これだけ人数が揃うと、チラシ作りはこの人が得意、プレスリリースはこの人ができる、というように、大抵のことは誰かができます。得意分野を補い合って、全部できるようになります。
―どのような思いで活動されていますか。

前川さん

 小田原市内では、周りは知っている人ばかりな状況です。人の移動が多いところ、流動的な転勤族が多いようなところではない。そうすると、自分や家族ががんになった、ということはなかなか言えないのかなと思います。最初のイベントでも、先生の話を聞いた人から「実は私も」という声がありました。そういった話をするきっかけにもなると思って、活動しています。また、毎月患者さんの声を聴く場を設けており、もっと活動を広めたいと思っています。こういう活動をしている団体がある、話せる場があるということを知っていただきたいと思っています。

宇田川さん

 私の方は、母親の闘病を経験した上でこの活動をして改めて思うのは、「あのとき、このことを知っていれば」ということです。本当にそう感じることが多く、同じような想いは娘にしてほしくないし、小田原でお世話になっている人たちに対しても同じように思っています。そのために必要な知識、スキルはこの団体に十分あると思っています。
 何も知らずに自分や家族のがんに向き合うのは本当に大変なことです。毎回のミーティングが、活動を進めるためだけでなく、私自身の学びにもなっています。小田原のために、というような大きなことではなく、自分の経験がどこかの誰かの役に立つかもしれないな、という気持ちで、それがこのメンバーならできる、と思っています。講演で前川さんが体験をお話しするときも、私は聞くたびに泣いてしまいますが、直に聞けて相談できる場所が小田原にあるというだけでも全然違いますので、そういうことをお伝えできれば、と思っています。
―知っていれば良かった、というのは具体的にどのようなことでしょう。

宇田川さん

 まずはがんになったときに、どういう治療をして、どのように状況が変化してきて、こうなったら私達はどういう覚悟をしなければいけないのか、ということからです。母の看病の時は何も見えず不安なまま、起きたことを後から追いかけるだけでした。こういう状態になったらもう動けなくなると分かっていたらこうしたのに、この治療をしたらこうなるって分かっていたらしなかったのに、という後悔がたくさんありました。自分で選択することができませんでした。

前川さん

 医療関係者の言うとおり、後をついていくという感じですね。

宇田川さん

 選択肢があるということすら分からず、本当に無知でした。母親ががんと分かり、姉と二人で必死に看病しましたが、20代で人生経験も浅く、自分のやっていることが合っているか分からず、見通しも立たず、助言してくれる人もいませんでした。
 ピンクリボンの活動に携わっている今なら、全然違っていたなと感じています。

前川さん

 どこへ相談すればよいか分からない、という声も多く聞きます。

宇田川さん

 先生や代表の講演を聞いても、事前に知っているのと知らないのでは違うだろうな、と思います。もし私が今、そうなったとしたら、このことはこの人に聞いて、これはこの人に、というのがすぐに想定できます。気持ちが落ち込んだら前川さんに連絡を取ろう、誰かを紹介してもらいたいと思ったらあの人に聞こう、というように。

前川さん

 道が分かってくるわけですね。

宇田川さん

 分かることで、不安が解消できるのが一番大事です。そういう意味で、この活動が誰かの役に立つということを確信しています。
―イベントも、「こういうことを知っていたらよかった」という経験からブースなどを用意されたのでしょうか。

宇田川さん

 そのとおりです。乳がんで突然髪の毛が抜けてしまってどうしたらよいのかわからない、抗がん剤の種類によって症状が違う、自分がこういう治療を受けるから元気なうちにウィッグを探しに行こう、など、知らないと準備もできません。知らないで突然直面して気持ちが落ち込んで…となるのとは全然違いますので、「今のウィッグはこんなにおしゃれですよ」といったことも知ってほしいと思います。

前川さん

 がんと言われ、抗がん剤を使うと言われ、ウィッグを探しに行かないといけないというのは大変つらい気持ちですよね。行ってみれば高かったり安かったりと、どれを買おうか悩んでいる方なども見てきましたが、「こういうウィッグがある」と分かっていれば、「がんかもしれない」となったときにそのことまで考えられます。知ることは本当に大事です。

宇田川さん

 検診では爪も使いますので、ネイルをはがさなくてはいけません。今はお湯で落とせるネイルがありますので、例えば明日先生の検診がありますと言われても、その日にお湯で落とせばいいわけです。普通に暮らしていると知らないですよね。
 6月のイベントの時に、男性もネイルとかウィッグを楽しく体験し、似合う、似合わないというように楽しんでいただきましたが、そういう話題からほかの人に伝わるということもあると思いますので、10月のイベントも同じように楽しく行いたいです。
▲6月に開催されたピンクリボンフェスティバル
―展示も一緒にやることになっていますね。

宇田川さん

 UMECOで1週間、展示します。大学の先生、市の健康づくり課、本当にいろいろな方が積極的に「応援するよ」と言ってくださいます。

前川さん

 行政はあまり動いてくれないようなイメージもありましたが、小田原市はすぐに動いてくれて驚いています。ただ協力するだけでなく、一緒に取り組んでくれますし、素晴らしいです。
―賛同団体や企業がたくさんいらっしゃいますね。

宇田川さん

 ありがたいことで、実績を積まないといけないなと感じています。
―こうした方々も、1年間続けるうちに自然と集まってくれたのでしょうか。

宇田川さん

 面識のあるスタッフから自発的に声掛けしていただき、つながりが増えました。

前川さん

 一人だとこうはいかないですね。また、面識のない人の紹介では難しいでしょう。

宇田川さん

 それまでの信頼関係がある人から投げかけられたら、話を聞いてくれますね。スタッフのみんながそれぞれ今まで信頼を積んでつながっていたところにお願いしに行きました。
―活動で、特に苦労したことなどあればお教えください。

宇田川さん

 やはり資金がないというのは、どの団体もそうだと思いますが大変です。自分たちをスタッフと言っていますが、資金の大元も私達の会費ですので…。持ち出しだけでやっていかなければいけない状況でしたから、市民活動応援補助金には大変助かっています。これがなかったら10月のイベントはできないか、もう1回私たちの持ち出しでやらないと、という状況でした。
 どうしても最初のうちは協賛金も集まりにくいですし、無理をすれば集められるかもしれないけれども、資金繰りを無理しなくていいというのは、すごく団体にとってはありがたいことだと思います。たいていは、みんなここで苦労しているはずです。
 6月のイベントのときは非常にたくさんの方が来てくださり、盛大にできましたけれども、実はそこを目指していたわけではなく、人があまり来なくてもスタッフがぐるぐる回っていればそれはそれで楽しいかな、というぐらいでした。
 そういう心持ちで取り組んだところ、自然とたくさん来ていただいて、ご褒美をもらったような感じでスタートできて良かったです。今回も同じような心持ちではありますが、あまりにも人が少ないと講師に申し訳ないので、若干プレッシャーを感じています。
―6月のときに盛況だったのは、どういったところがうまくいったのでしょうか。

宇田川さん

 みんながそれぞれ口コミで知り合いに広めたり、チラシを可能な限り配ったり置いてもらったりと、あの時点でできることは全部やりました。

前川さん

 宇田川さんの作ったチラシも大変良かったです。デザイン依頼料をお支払いできれば良いのですが…。
―元々、市民活動をされていたのでしょうか。

前川さん

 山口県で、15年以上NPO活動に携わっていました。2度目のがんの直後に立ち上げて、緩和ケア病棟をつくる運動に携わり、厚労省などにも掛け合って実現につながりました。当時新聞に記事を掲載したところ、「私もがんです」といった声がたくさん電話で寄せられて、そういった方たちが会員になってくれました。国のがん対策にも関わっていました。
 偶然小田原に引っ越してきて、しばらくは息をひそめていましたが、出会いがあって…老体に鞭を打っております。

宇田川さん

 私は、4年ほど前に小田原ウイメンプラスという女性の活躍推進コミュニティの立ち上げに関わり、そこから派生してピンクシャツデーのイベントに携わりました。そういったことで活動していると、「こういうことを一緒にいかがですか」と声がかかり、ほかにもミュージカルを実行委員会形式で実施したこともあります。事務方が多いです。
―「この活動をやっていてよかった」と思われるのはどのような時でしょうか。

前川さん

 ここいくサロンという患者サロンを、現在はUMECOで開催しているのですが、そこに来られた方が自分の思いを吐いたり、お電話いただいたりすることもあります。そういうことがあると「患者さん、ご家族のために小さな種一粒はまけたかな。これからもっと芽が出て、膨らんでいくかな」と感じます。先日も、すごく大変な思いされた方が、ここで話して帰られました。
 サロンは、完全に固定しているわけではありませんが、月1回は開催しています。本当は月2回か3回は開催したいのですが、少し難しい状態です
―これから市民活動を始める方たちに、何かメッセージなどお願いできますでしょうか。

宇田川さん

 一緒にやるのが楽しい人と活動できるといいですよね。成果とか報酬とか、市民活動はそういうことがゴールではないと思っています。また、「誰かの役に立つ」というのも、あまり突き詰めると重荷になります。やっていることが楽しいとか、仲間と一緒に活動するのが楽しいとか、そういうことが大事だと思います。

前川さん

 こういう活動を続けていると、気が付かないうちに、いつの間にか自分もいろいろなプレゼントをいただいていると感じます。始める方には、ぜひ頑張ってほしいです。
―市の制度(市民活動応援補助金)をご活用いただいていますが、資金面以外のメリットを感じることはありますか。

宇田川さん

 チラシに「小田原市市民活動応援補助金交付事業」と入れられるので、信用を得られたり、PRの効果が高くなったりすると思っています。
―会員募集はされていますか。また、男性でも入会できるのでしょうか。

宇田川さん

 賛同団体、応援会員も募集中しています。11月ぐらいには、申込フォームを立ち上げたいと考えています。
 男性の入会もできますし、今もいらっしゃいます。
―会員の方は、身近な方ががんになった、等の当事者の方が多いのでしょうか。

宇田川さん

 当事者の方よりも、「とても素敵な活動をしているので、会員として応援します」という方が多いです。「家族ががんなので他人事とは思えない」という方もいます。

前川さん

 まだ1年ですので、当事者にしっかり関わっていただくところまでは活動していません。これからの課題と思います。

宇田川さん

 少しずつ、会員の方に提供できることを増やしていければ。今は、まずは活動を開始したということを知ってもらいたいと思っています。
 昨今では、自分、家族、友人と、がんと関係なく生きる人はほとんどいないと思います。若い人ならともかく、ある程度の年齢になれば、親戚とか友達とか。前川さんも「教育という形で関わっていくことが大事」と仰っていますが、そのぐらいに全員学んでおいた方がいいと感じています。

前川さん

 がんを知ることは大事ですね。知っていると知らないとでは全然違います。
 この前、他団体でお話したときに、「男性は『どうせ俺はならない』と考えがちです」と仰っている方がいました。その方は当事者でしたが、実は自分自身のこととして考えている人は少ないと感じます。女性の方が、自分自身のこととして考えているかもしれません。
 だから小田原市を、皆さんががんのことを考え、がんを学ぶまちにできればいいですね。それには大きい講演会が必要かな、と考えています。

宇田川さん

 自分や家族のことを考えるというのは、大切にするということだと思いますので、講演会をきっかけに空気感みたいなものが広がったらいいですね。検診に行かないのは、忙しいから、介護しているから、子育てしているからと、自分のことを後回しにしてしまうという声をよく聞きます。自分のことを大事にして、優先していいんだ、という認知が必要と思います。

前川さん

 怖い気持ちもきっとあると思うんですよ。もしも…と思ったら、「今年は検査しなくてもいいか」となってしまう。

宇田川さん

 乳がんも、自分でそうかもしれないとは思っても、何となく先延ばしにしてしまい、そのせいで手遅れになってしまうというのは、よく聞く話です。しかし、乳がんは早期に発見できれば、高い確率でその後普通に生活ができます。そういうことを知っていると、勘違いでも何でもいいからとりあえず検査してみよう、と思えるかもしれません。

前川さん

 まずは知ること。それから、話しながら「頑張るぞ」という気になっていただくことを目指しています。

宇田川さん

 私も本当に何も知らないことばかりでした。みんな早く聞きにきてほしい、と思っています。
―本日は、お忙しい中インタビューに応じていただきありがとうございました。
 

公開日:2023年11月01日

市民会館外観写真
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9時00分〜21時30分
(会議室・活動エリアの使用は21時00分まで)
休館日
毎月第1月曜日
(祝休日の場合は、その日以降の最初の平日)
年末年始(12月29日〜1月3日)
※2024年の開館日は1月5日(金)からとなります。